蝋原型
蝋原型
蝋原型
蝋原型
型込め
型込め
鋳造
鋳造
仕上げ
仕上げ
仕上げ
仕上げ
 「森」をテーマに、熔けた金属を型に流す「鋳金」技法による青銅作品を中心に制作しています。

 土や粘土でつくる“真土(まね)式蝋型鋳造法”という伝統技術を主に扱っています。この技術の起源は紀元前にまで遡り、日本では奈良県の薬師三尊像などにこの技術が使われています。私の作品の多くは、これとほぼ同じ工程を経てうまれています。産業としてはほぼ絶滅したと言っても過言ではない技術ですが、この技術でしか得られない独特の風合いは、私のつくる「森」に欠かせないものとなっています。また、鋳型に使用した材料のほとんどが、再び別の鋳型として、特殊な処理をせずに再利用出来るというのもこの技術の魅力のひとつです。

 この技術は、蝋を金属に置き換えるものでもあります(ロストワックス)。柔らかな蝋を、土の質感を含みながら堅牢な金属に置き換えることで、木々が風に揺れる様や、陽に煌めく枝葉の一瞬の姿を揺るぎないものとして表現しています。また、色彩は“緑青”と呼ばれる錆によるもので、自然界の色を青銅の中から引き出すような方法で発色させています。

 人と自然の関係を思考する時、金属文明と森にある負の歴史と向き合うことは避けられません。人類の発展のために犠牲になった数多くの森、その上に生きている今日の我々。何物にも変え難い安らぎや身の竦むような恐怖といった生・負両側面の事柄を与える「森」を金属でつくること。その矛盾を受け容れることでうまれる、存在の確かさを表現したいと考えています。

 闘争の時代を越え、共生の時代すら越えなければ、この先に拡がる空虚を抜けられないのではないかと考えています。むしろその空虚と暮らすように、日々を見つめられるような存在をつくること。直接的に自然へ働きかけるのではなく、創作物を通じて人々の抱える苦しみに光を差すきっかけになれたのなら、それは私にとってこの上ないよろこびです。
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