熔けた金属を型に流し込む「鋳金」を用いて、「森」をテーマに制作しています。
「鋳金」という技法は主に〈原型→鋳型づくり→鋳造→仕上げ〉という工程を経ます。
作品(商品)の形状や用途によって、原型素材や鋳造方法を選択します。
私は主に、原型に「蝋」を使用した「蝋型鋳造」という技術を扱っています。

 原型の蝋はとても脆く繊細な素材です。また、型に覆い熱で熔かし消失させることが前提の儚い存在でもあります。このような不確かなものを、堅牢な金属に置き換えることは、揺れ動く曖昧な意識を、生命をもつかたちとして存在させることのように感じます。
左から、①原型1 ②原型2 ③三重県にあるお気に入りの森。写真は2010年ごろのもので、現在は荒れ果てている。
 私は幼少から森に対して憧れと畏れの感情を強く抱いていました。風のある晴れた朝に揺れ煌めく光、昼の強い日差しによって形成される重層的な色彩、ひとつの生物の唸り声のような夜の騒めきと気配、昼夜を問わず生まれる深い暗闇。何物にも代えがたい安らぎを生み出す時もあれば、どうしようもない恐怖を覚える時もある存在、それが私にとっての「森」です。これら両側面の感情が、人に「確かに存在している」という実感を与えるのだと考えています。

 私の作品「森」は、技法や素材のもつ精神性が、ひとつの風景として表されることを目指しています。造った直後の段階では、作品がまだおぼろげな状態であると常々感じます。しかし、人の目に触れ心を動かした時はじめて、確かな風景へと変わるのだと考えています。人が何かを得る際は、純粋なよろこびだけを感じる事は難しく、必ず痛みや不安を伴います。それらを経た先に見える風景から、私が森から受け取ったことと同じような「確かに存在している」という強い実感を生み出すことが出来れば幸いです。

左から、①鋳型で覆われた姿(真土蝋型鋳造) ②鋳造(吹き)の様子 ③鋳造後、鋳型から取り出した姿
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